「SEは会社で搾取されているから今すぐフリーランスになるべき」という意見を見ることがありますが、何も考えずにこの意見を信じるのは反対です。
正直、自分も会社員よりフリーランス派です。しかし、この意見には「リスク許容度次第で」という前提があると考えています。
ということで、今回は会社員とフリーランスどちらも経験した自分が、あらためて会社員のメリットを書いていきます。
収入が保障されている
- ・日本の企業もジョブ型雇用に移行している
- ・大企業も黒字でリストラを行う時代になってきている
- ・終身雇用を期待して大企業に就職したのに部署ごと集団解雇された
といった話を聞くこともありますが、日本では会社員は労働法で守られている(*1)ので仕事ができない社員でも簡単にクビにすることができません。
たとえ社員の能力が低かったり、会社は勤怠が悪かったとしてもそれらを証明する必要があり、ヘタをすれば訴えられてしまうこともあるので、社員を解雇しようとした場合はそれなりのプロセスが必要になります。
(ググるとたくさんの事例が出てきますので、是非、見てみてください)
労働契約法第16条 : 解雇に客観的な合理的理由があり、社会通念上相当と認められる場合でなければ無効である
それにくらべてフリーランスは仕事ができないとすぐに契約を打ち切られます。
企業側も社員を雇用してうまく機能しないリスクを避けたり固定費を下げるためにフリーランスと契約するので、最近は1~3ヵ月単位で契約をして都度、契約を延長していくケースが多いです。
当然、仕事ができないと契約の延長はありませんし、契約書に「求めるスキルに満たない場合は相談の上で契約を打ち切れる」といった文章を入れていると、契約期間中でも仕事がなくなることもあります。
特に、会社員は病気になったり入院しても収入がある程度保証されていることが、大きなメリットだと考えています。
自分はフリーランスとして独立した後に入院したことがあります。
幸い、1週間程度の短期入院だったことと、リモートワークで仕事ができたので特に問題になりませんでしたが、さすがに少し不安になりました。
入院や手術といったメンタルにきている中で収入がある程度保証されているという事実は、1つのメリットではないでしょうか。
未経験のタスクにチャレンジできる
会社には社員を育成するという観点がありますので、「未経験のチャレンジタスクに挑戦できる」というメリットがあります。
個人的にはこれが会社員の一番のメリットだと考えています。
「ある程度、評価されている必要がある」とか、「会社の規模や業界での立ち位置」とか、完全に希望通りとはいかないかもしれませんが、一次受けをしているSIer企業であれば、チームをつくってプロジェクトを進めていきますので、経験がなくても顧客折衝やチームリードといったタスクにチャレンジしやすいです。
社員に経験を積ませるため、単価を下げて新入社員をプロジェクトに参加させるということもできます(もちろん、給与は普通にもらえます)。
きちんと仕事をして経験を積んでいれば、次のポジションを狙える会社に転職してチャレンジをしながら収入をあげるという選択肢を狙うこともできます。
それにくらべてフリーランスは経験が求められます。
当然、企業は即戦力を求めてフリーランスと契約をしますので、未経験の領域に関する案件を契約することはハードルが高くなります。
もちろん、勉強して自分の作品やポートフォリオや、これまでに同じ会社と契約した別案件での実績をアピールすることで未経験の領域にチャレンジすることもできますが、経験者がライバルとなりますので、ある程度の営業スキルが必要となってきます。
自分も会社員時代にコンサルタントとしての顧客折衝経験、チームリード経験をしていたことが差別化につながり、独立してからの案件受注に役立っています。
特に、チームリードは未経験でフリーランスとしてそのポジションにつくことは、会社員でそのポジションにつくよりハードルが高いと感じています。
社会的信用が高い
日本において会社員はまだまだ社会的信用が高いです。
これは大きなメリットです。
会社名を書くだけで大きなローンが組める、賃貸契約時に保証会社との契約や収入証明書類を求められないという事実は無視できないのではないでしょうか。
自分はフリーランスとしての収入が1,000万円の時に、賃貸契約をしようとして保証人を保証会社にすることを求められました。駐車場契約では、企業との契約書や入金履歴等の収入証明を求められました。
ちなみに、会社員としての収入が400万円の時は、同じ条件で特に問題なく賃貸の契約ができました。
今年、法人化したので、次の契約では法人化したことによってこの辺がどう変わるのかがわかるのを楽しみにしています。
フリーランスになる前に自分のリスク許容度を確認する
会社員とフリーランスを比較すると、現時点では「社会からの信頼度」、「有事の際の補償」はやっぱり会社員の方が高いです。
当然、フリーラスには自分の売上から会社にひかれる間接費がありませんので、同じことをしたときにフリーランスの方が収入が高い、都内でエージェントを経由すると仕事に困ることは少ない(特に常駐型であれば)というのは事実だと思います。
自分もフリーランスをやってみて、社内行事や評価面談がありませんので気楽ですし、仕事をきちんとしていると企業とのリレーションもできてくるので今のところ仕事に困るイメージはほとんどないです。
むしろ、顧客折衝やマネージメントができる人材がほとんど見つからないという話をよく聞きます。
フリーランスの方が収入が上がることと、税金面でも会社員よりフリーランスの方が優遇されていることもあり、SEはある程度経験を積んだら、会社員よりもフリーランスになる方がメリットが大きいと考えています。
ただ、このキャリアを考えるときに自分のリスク許容度という軸を忘れないようにしましょう。
「20代前半独身」のケースと「30代で結婚して子供がいる」ケースでは許容できるリスクは違います。
自分のスキルに自信がないのであれば、事前に複数のエージェントやフリーランスの方に相談することで客観的に自分のスキルを評価することもできます。
独立するということは、「自分の頭で考えて自分の選択肢に責任を持つ」ということです。
なにも考えずに「会社員は搾取されている」という意見を盲信するのではなく、自分のいる環境、大切にしているもの、そしてなにより自分の気持ちをしっかりと見つめて行動しましょう。
この記事が、皆さまのお役に立てると嬉しいです!